世界レベルに視野を広げて言えば、オンラインカジノの違法性や合法性は、国や地域によって異なります。
一般的に日本では、俗に公営ギャンブルと呼ばれるものは限定されています。公営競技では競馬・競輪・競艇・オートレース、公営くじで言えば宝くじとスポーツ振興くじに大別されます。
また、パチンコ・パチスロはギャンブルと定義されておらず、風営法における風俗営業と定義されています。
この相違点については別の機会に解説しますが、パチンコに類似しているカジノが違法であるという認識も、一般的には定着していることと思います。
ドラマなどで闇カジノが一斉摘発されるシーンはお馴染みですよね。
では、インターネット上で行われるオンラインカジノはどうなのか?という素朴な疑問が沸くかと思います。
結論から先に言うと、「違法でも合法でもない」という状態が答えです。
違法でもなければ合法でもない、なんてどうも釈然としないですよね。
いったいどういうことか?を今回はいくつかの重要なポイントに分けて、その違法性と合法性を整理していきますので、オンラインカジノの理解に役立ててください。
日本の法的解釈を整理します(違法・合法・グレーゾーン)
まずは日本の刑法について整理しましょう。違法なのか合法なのか、はたまたグレーゾーンなのか、という客観的な理解に繋がります。
賭博罪
カジノ行為に適用される罪名は賭博罪になります。刑法185条に定められています。
そして、下記の種類に分かれます。
- 単純賭博罪(プレーヤー)
- 常習賭博罪(プレーヤー)
- 賭博場開帳図利罪(運営者)
単純と常習ではどの程度の行為があったかで分かれますが、要するに賭博罪は、賭博を「した者」と「させた者」の双方に適用されるということが1つ目のポイントです。
次に、賭博罪が成立するための要件は、
- 偶然性
- 財物を賭けてその得喪を争うこと
この2要件が揃って罪が成立する点が2つ目のポイントです。
したがってカジノゲームの場合、不正やイカサマが無ければ、賭博罪が成立する要件を満たしている、と言えます。
属地主義
「日本国内において罪を犯したすべての者に対して」適用されるのが日本の刑法です。これは「どこで当該行為をしたか(するか)」によって、刑法が適用されるかどうかが決まるんです。
例えば、東京で外国人がカジノを運営したら賭博場開帳図利罪になります。同じように、海外からの観光客が日本で日本人が運営する違法カジノに参加したら単純賭博罪になります。
しかし一方、例えば、日本人がフィリピンの(もちろん合法な)カジノで遊んでから帰国しても違法にはなりません。あるいは、日本人が外国で正規にライセンスを取得してカジノ事業を運営しても違法ではありません。
刑法上の属地主義とは、そういうことです。
グレーゾーン
オンラインカジノの法的解釈はここが最重要ポイントになります。
上記の法的観点に忠実に解釈をすると、オンラインカジノのビジネスモデルはグレーゾーンであり不透明な状態と言えます。
つまり、外国のカジノ事業者が運営するオンラインカジノは、日本国内に物理的な店舗等の設備がありません。もちろん人材も日本国内に存在しません。物理的な設備や人材は日本国外に存在し、インターネットを通じてサービスを提供している状態です。
そこに、日本国内に居住している人が、インターネットを通じて当該カジノで遊ぶという構図。
この一連の行為に対して、現在の日本の刑法を適用しようとすると少々無理がある、ということです。
法律家の中には違法と断言する人も居る
ネットでこの問題を調査すると、弁護士などの法律家による意見がいくつか出てきますが、以下の点でプレーヤーに対して賭博罪を適用できると主張されています。
・インターネット上だとしても日本国内における行為と解釈すべき
・必要的共犯(後述します)は非適用である
日本国内における行為
インターネット上だとしても、日本国内からカジノに参加するのだから「日本国内で賭博を行っているもの」として、賭博罪が適用されてしかるべきだ、という主張です。
まぁこれは、「屁理屈言うな!」的な発想でしょうね。言いたいことは解ります。
必要的共犯
これは、要するに「双方セットで成立する」という意味です。
例えば賄賂罪を考えてみてください。
賄賂を「贈る側」と「受け取る側」がいて初めて成立しますよね。「贈賄と収賄がセット」になっている、これを必要的共犯と言います。
日本の刑法では、賭博罪においても、この必要的共犯が適用されるとの基本スタンスを持っています。だからこそ賭博場を開帳する側と参加する側との「双方に処罰が規定されている」のです。
したがって、違法論を展開する法律家は、必要的共犯は適用されないと考えています。
つまりカジノ運営側が違法ではないという点に関わらず、日本に居ながらカジノに参加したプレーヤーを個別に賭博罪が適用できる、という主張です。
摘発事例
日本で実際に起きた、オンラインカジノの「プレーヤーの摘発(逮捕)事例」は1例だけあります。
2016年京都にて、海外(英国)のオンラインカジノで遊んでいたプレーヤー3人が逮捕される事件が発生しました。(京都府警)
報道によると、逮捕容疑は2016年2月下旬、とある会員制カジノサイトでブラックジャックに現金数十万円を賭けたという疑い。
京都府警による逮捕後、京都検察に引き渡され略式起訴となり、裁判所は求刑通りに罰金20万円または30万円という軽微な略式命令を3名に言い渡しました。
これに対し、3人中2人は命令に応じて罰金を支払いました(起訴内容を認めて罰金を支払うことで事件を終わらせる=前科となる)。
しかし残り1人はこの命令に従わず、正式裁判で争うことを選択し、不起訴を勝ち取りました。
当該裁判を担当した津田弁護士のブログです↓↓
この事件の特徴は、ライブカジノでチャットをしていたらしく、さらにその会話が丸見えだったそうです。また、プレーヤーの賭け金額が目視確認できたとのことです。
つまり警察が現行犯逮捕に踏み切りやすい状況だったようです。
さて、上記の実例からシンプルに事実整理をすると、
- 有罪判例(略式罰金)
- 不起訴(起訴の取り下げ)
の2つが存在すること。
このことからオンラインカジノは違法でもなく合法でもないと解釈せざるを得ないと言えます。つまりはグレーゾーンであると解釈せざるを得ないということです。
ちなみに、、、この場合は違法です…
上述したグレーゾーンは、あくまで…
- 海外で公式ライセンスを取得(正規に運営されている)
- 海外に拠点と業務設備がある
上記要件を満たしたオンラインカジノ事業者である場合に限ります。
したがって、以下のようなケースは充分に違法になり得ます。もっと言えば、賭博罪容疑で逮捕される可能性が高まります。
・公式ライセンスを取得していないオンラインカジノ事業者のサイトでプレーをする
→→これは「道連れ」になるかも、という意味です。
もしもカジノ事業者が検挙された場合、必要的共犯の論理で逮捕されるかもしれません。
・ネットカフェカジノでプレーする
→→これはオンライン上で行っているように見えますが、「国内の店舗の中でプレーして換金までやっている(場合が多い)」ので、立派な賭博場開帳罪&単純(または常習)賭博罪です。闇カジノとか裏カジノとまったく同じです。
知らなかった…では済まない
うっかりアウトは絶対に避けてください。なので、オンラインカジノを安全に楽しむために、下記の状況や状態を覚えておきましょう!
- 日本人のみのが集まる場所でプレーしない
- 「日本人向け〇〇」というカジノサイトに行かない(ドリームカジノ事件の教訓)
- SNSなどでオンラインカジノの発言をしない
- チャット会話で、個人を特定できる発言をしない
- その他、具体的な情報をネット上に載せない
要はですね、オンラインカジノを検挙しようとしている警察の目に触れる可能性が高まるんです。
金額やID、収支などは、カジノプレーの証拠となってしまいます。(警察という組織は「容疑」で逮捕できます)
最終的に不起訴になるかもしれませんが、一般的感覚として、「容疑」も「逮捕」も「裁判」も、身に降りかからない方が良いに決まっていますよね。
ですので、上記のような行動は避けましょう。
まとめとカジノ法案
以上のように、現在の日本におけるオンラインカジノの違法性、合法性について整理してみました。
賭博罪について、法律家による違法論もあるが、グレーゾーンと言われる理由も存在するなど、全体像をとらえてご理解してもらえたら幸いです。
ですが、そもそも本テーマが釈然としない状態である根本的な原因は、現行法(刑法)がインターネット社会を想定していない、という点に尽きます。
今後の法整備について
今後の動向はもちろん注目しておく必要はあります。
しかし、ここ数年の行政機関の発言などを見渡してみても、現行の法改正を検討している動きはありません。
他方、その意味では注目に値する法律が、通称ではIR推進法とIR整備法です。※IR(Integrated Resort)=統合型リゾート
俗称的には「カジノ法案」なんて呼び方をされているのを聞いたことがあるかもしれませんね。
上記IR両法案はすでに成立および施行されています。推進法が2016年12月、整備法が2018年7月。
様々なジャンルのサービスを集めて、リゾート地を作るための法律ですね。もちろん狙いは「経済効果」でしょう。
ショッピングモール・ホテル・レストラン・映画館などが集合した巨大なリゾート地を建設することで、国内外から人を誘致できれば、非常に高い経済効果が期待できます。
首相官邸公式Web(推進法):IR推進会議取りまとめ(概要)
首相官邸公式Web(整備法):特定複合観光施設区域整備法に係る説明会資料
IRを誘致した地域の経済や税収に直接寄与します。旅行会社や地元のホテルなどのサービス産業が活性化されて、巡り巡って税収が増えるという好循環を狙う政策ですね。
そして、そのリゾート地を魅力溢れるものにするにはカジノが必須、ということなのでしょう。
海外からの(インバウンドと言う)旅行客をいかに誘致できるか?という観点に立つと、カジノを入れることが得策であるのが明白であるという判断ですね、きっと。
ということで、IR法案がカジノ法案と呼ばれているのは、IRの目的をかなえるために「単独では違法であるカジノ」を入れたことで、カジノ法案などと呼ばれているわけですね。
こうした時代の流れを考慮すると、現行の刑法を抜本的に見直す(オンラインカジノを完全に違法とする法改正)ことは、状況的に考えにくいと言えるのではないでしょうか。
以上のように、オンラインカジノの現状を現行法律に基づく整理と具体的事例、IR法案といった重要なポイントを通じて解説してきました。
オンラインカジノにおける違法性・合法性についての知見にお役立てください。
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